【映画】カラーパープル(1985):女性達の心は決して折れない

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※ネタバレを含みます。

2023年のミュージカル映画「カラーパープル」を劇場で観る前に、予習で1985年のカラーパープルを観ました。

作品情報

上映時間  : 154分
映倫    : PG-13
制作国   : アメリカ
劇場公開日 : 1986年9月13日
監督    : スティーブン・スピルバーグ
主演    : ウーピー・ゴールドバーグ

ざっくり概要

時は1910年代のアメリカ。主人公セリーは、最愛の妹ネリーと父との3人暮らし。セリーは10代で父の子を2人産んだが、赤ちゃんは産後すぐ父に奪われ、行方はわからずじまい。
その後は、父の決めた結婚相手へ嫁ぎ、妹と離れ離れになり、夫となったミスターに暴力と抑圧を受けながらも、彼女は耐え忍んで生きていました。
身の回りに次々と現れた、自分の芯がしっかりとある強き女性達に少しずつ影響を受けて、自尊心を取り戻したセリーは、ついにマスターの元を去る事を決意して、、、。

時代背景について

アメリカにおける南北戦争後の時代で、奴隷制度自体は廃止されているものの、人種差別はなくなっていません。白人による黒人差別は色濃く、更にフォーカスされているのは、黒人社会の中でも蔓延っている男尊女卑の差別。
白人にも、黒人男性にも不当な扱いを受けながら生きていた黒人女性の視点で物語は進みます。

主な登場人物

主人公:セリー /ウーピー・ゴールドバーグ
セリーの妹:ネティ /アコーシア・ブシア
セリーの夫:ミスター(アルバート) /ダニー・グローヴァー
ミスターの子:ハーポ /ウィラード・ピュー
ハーポの妻:ソフィア /オプラ・ウィンフリー
ミスターの彼女:シュグ /マーガレット・エイヴリー

見どころ

若きウーピー・ゴールドバーグの見事な演技力に脱帽!私にとってのウーピーは、どの映画でもキャラ濃いめのイメージだった為、”か弱く控えめだが芯の強い女性”を見事に演じきっていて素晴らしかったです。
私的には、セリーが剃刀を研ぐシーンにおける彼女の”秘められた怒り”に、鳥肌が立つほど痺れました。

語らうセリー

全編にわたって、セリーがストーリーテラーをしているのだけど、それがとてもいい。何がいいって、セリーは内気な性格で、受けた暴力に反抗しないし、とにかくもの静かに生きているんだけど、語りに耳を傾けると彼女の中にはユーモアがあることが分かるんです。
幸せではない人生の真っ只中にいてもユーモアを失わずにいるのって、生きる為には大切な事なんじゃないかって思いました。

影響を与える二人の女性

最初は気の弱い内気な女の子セリー。大人になっても自由がなく、自分の意見を言える機会もありません。しかし、少しずつ、段々と、、、周りの力強い女性達、ソフィアとシュグに触発されていくのでした。

ソフィアは、ミスターの子、ハーポの妻。血気盛んというか、とにかく強気で男尊女卑なんて軽く蹴散らします。ハーポが扱いに困っていた時、セリーは(ミスターに暴力という権力を当たり前に振りかざされていたので、)彼女を殴って上下関係を示せと言いました。しかし実行にうつしたハーポはソフィアに反撃されてしまいます。やられたらやり返す、それがソフィアでした。

そしてシャグ。登場時、煌めく紫色のハイヒールを履いていたのが印象的です。自由奔放な彼女と徐々に仲良くなっていくセリー。シャグの影響は特に大きく、一度はミスターの家から脱出しようとセリーが目論むほど。でも、いざその時になったら自分の気持ちが言えず、出れずじまい。。。ここは悲しかったです。セリーの気持ちを思うと、悔し涙がホロリ。

ユーモアの大切さ

この映画は、撮り方が楽しいです!観てて、「映画を観てる」という気持ちをしっかり味わえる良作だと思いました。(私がスピルバーグ監督の作品が好きだからかもしれませんが。)

まず、シュグがミスターのことを”アルバート”と呼んでいるのを知ったセリーは、一人の時にこっそり「アルバート」と口に出して苦笑いしています。
またある時は、ミスターお手製の焦げた朝食をシュグに投げつけられたカラフルな壁を見ながら、自分の出した朝食が投げられたら”次はどんなカラーが飛ぶのか”みたいな表現で、楽しみながら壁を見つめるセリー。
シュグの事を悪く言う義父に腹が立ったセリーは、自分のツバを入れた水を差し出し、飲むまでジーッと見つめて満足そうにしたりなど、全体の内容は重く暗くても、ユーモアの存在がある事でセリー自身を観ていて楽しめちゃうんです。

特に私がお気に入りなのは、夫婦がベッドから急いで下に降りようとしているとき、その場でお互いがクルクルと回り合うシットコム的なシーン。
一度去ったシャグが戻り、歓喜するセリーとミスターのワンシーンなのですが、玄関へ行ってみると、シャグは夫となった男性と一緒にいたんです。
それを見て分かりやすく落ち込む二人。
ミスターはそうだろうけど、セリーもなのが面白いところ。これがまた、ミスターに負けないくらい落ち込んでるんです。笑

セリーはシャグと過ごした濃密な一晩が忘れられなかったようです。

ソフィアに降りかかった悲劇

ソフィアはある時、街で声をかけてきた白人女性にちょっと生意気な口を聞いて、その夫である市長にビンタされます、そしてもちろんやり返す。
すると、周りにいた白人がソフィアを囲み出して、駆けつけた警官に突然殴られ、気絶。その後何年も刑務所に入れられることになってしまいました。
この時代の恐ろしさ。でも、記憶に新しいブラックリブズマターを考えると、もしかしたらまだ完全には消えていない事かもしれない。

ようやく戻ってきたソフィアは、変わっていました。市長の奥様に仕えるしかすべはなく、静かにひっそりと揉め事を起こさぬようにと、大人しくなっていました。。。奴隷制度廃止なはずが、「私は黒人に人気なのよ。」と言って、黒人を仕えさせたがる市長夫人。。。南部の白人の変わらぬ感じ代表選手か。

しかし、セリーが家を出る決意をし、皆との食事の席でミスターに本音をぶちまけた時、凍りついたその場でソフィアが思いっきり笑い出します。
彼女はセリーのおかげで自分を取り戻したのでした。そして食べまくる。笑
ソフィアは刑務所で自分が腐っていくと感じていました。出所後、これから一生白人に仕えるのかと落胆していた時に、たまたま店で会ったセリーが親切にしてくれて、自分が生きていること、自分を大切にしてくれる人がちゃんといるという事を思い出し、心から感謝していたのでした。

セリーは人知れずソフィアの心を救っていたのでした。

人が人を想うことの大切さ

セリーは序盤で、自分の子供を奪われます。そして、何よりも大切な妹ネティとも離れ離れにされてしまいます。子供にもネティにも何年も会えず、生死も不明で、ただただ想いながら生きています。実はネティは、頻繁にセリーへ手紙を書いていたけど、ミスターがずっと隠していた為、セリーは何年もそのことを知らずに生きていました。

セリーはネティを想い、ネティはセリーを、お互いが共にいられなくても、想いがしっかりとあった事で彼女らの心は折れずに頑張り続けることができたのではないでしょうか。

パープルの意味

劇中でセリーとシャグが花畑を散歩しながら語るシーンがあります。
「神も愛されたがっている。紫の花畑を美しいと思えなければ、神も残念がる。」特殊な色に見えるけど自然界にもある紫色と一緒で、特定の人にしか愛がないわけじゃない。
誰もが愛を求めることができる。的な事を言いたいのかな、と思いました。