【映画】ウエストサイドストーリー:音楽やダンスに負けてない光と色彩の表現力に脱帽です

※ネタバレはしていません。

と言いたいけど、過去作があるのであまり気にならないと思う程度は書いてます。

過去作との比較について

今作は、1961年公開のウエストサイドストーリー(当時の邦題はウエストサイド物語)を、スティーブン・スピルバーグ監督が改めて映画化した作品です。

現在は、欧米だけでなく世界中で意識されるようになった人々の人種間による”分断”。これが作品のテーマであり、ミュージカルの調べに乗せて見事に表現されています。

スピルバーグ監督は、子供の頃からこの映画がとても好きだったそうで、脚本作りに5年以上もかかったとか。

当時、アニータ役を演じたリタ・モレノは、今回新たな配役で演じ、「サムウェア」を歌っています。

過去作のイメージを変える事なく、新たに誕生したウエストサイドストーリーは、観る人を魅了する素晴らしい作品に仕上がっていました。

ざっくり概要

ニューヨークの再開発地域を舞台に、街の荒くれ少年軍団”ジェッツ”と、プエルトリコからの移民”シャークス”の抗争は日常的に起こっていました。そんな中、”ジェッツ”の元リーダーであるトニーと、”シャークス”のリーダーであるベルナルドの妹マリアは、ダンス大会で互いに一目惚れしてしまいます。

周囲に許されない恋に落ちてしまった二人と、彼らを取り囲む人々の、たった2日間の出来事です。

感じたこと

早々に思いました。

映画館で「観る価値がある」映画です。

過去作は、鑑賞後に暗い印象が強く残って沈んだ気持ちになりましたが、今作では、歌やダンスを取り巻く色や光の美しさが強く残って、帰路にサウンドトラックを聴き入るほど余韻に浸りました。

具体的には、過去作よりも内容を理解しやすくなったと思います。私自身、ウエストサイドストーリーを観たことがなかったので、過去作を観たのはほんの数ヶ月前の事です。

過去作では、いくつか疑問点がありました。

まず、トニーの状態が不明でした。ジェッツから離れてまともになろうとしているけど、そう思うようになったのは何故なのか。今作では、その疑問がストーリーのセリフや行動で自然と理解できるように作られていました。

また、トニーとマリアの恋愛について、過去作では急展開だな〜と思うようなシーンがありました。今作ではごく自然に、二人の心が惹かれあって近づいていくのが分かるシーンが盛り込まれていました。

そして、これは時代差で当たり前かもしれませんが、映像美が過去作よりも強く感じられます。ダンスシーンの衣装はもちろん、アニータの仕事部屋やプエルトリコ移民達の洗濯シーンで、色とりどりの生地が映るのはとても綺麗でした。

マリアの職場のエプロンまでもおしゃれなんです。(職場も変わっていますが、いい改変だと思います)

音楽だけでなく、色彩にもスピルバーグ監督のこだわりが感じられました。

更に、トニーとマリアが恋に落ちるシーンでは、光の感じが美しく眩しくて、”恋”という感情を視覚で表現しているのかな、とも思いました。


1点だけ気になってしまったのが、気分がアガるはずのオープニングの指パッチンです。これが、サノスのせいでイメージ変わってしまった。という事。これは完全に個人的問題です。笑

音楽は今も昔も良き

「アメリカ」は、色彩の美しさと、アニータや女性たちの歌声と笑顔が印象的でした。

「マリア」は、ちょっと照れます。そんなに名前呼ぶ?って。日本人ならではの意識なのでしょうか。。。

「トゥナイト」は、マリアの高音がとてもキレイ。後半でジェッツやシャークス、アニータと重なるバージョンのトゥナイトも、エンドへ向けての盛り上がりが強く感じられてよかったです。

「ジー、オフィサークラプキ」は、今作では道端ではなく、空になった警察署で”ジェッツ”のメンバーが歌います。後半に女性さながらの高音で歌い上げるキャラクターは筋肉ムチムチ男性になっていました。最後の”猫ふんじゃった”音での締めくくり、大好きです。

そして、「マンボ」

アニータの声がけで始まる勢い溢れるミュージックと激しいダンス、皆が一斉に「マンボ!」と叫ぶ時には、自分も一緒に言いたい!という思いに駆られて、一人でニヤニヤ笑ってしまう程でした。ダンスシーンは気分がアガります。

個人的に好きなのは

私は、主人公マリアよりも、兄ベルナルドの恋人アニータに心が動かされます。これは過去作でも同じ。

マリアはまだ若く、考えも少し浅いように感じますが、アニータは若くてもしっかりしていて、自信に満ちた魅力が溢れているように感じます。

劇中での悲劇の後、それでもマリアの手助けをして、酷い目に合い、遂にキレて間違った発言をしますが、それは自分の心を守るためだ、だからこれでいい。と、私は個人的に思っています。

最後に

エンドクレジットの最後に、For Dadと表示されました。

スピルバーグ監督は2020年に父親を亡くしており、その父に向けて作った作品なのでしょうか。

私も映画が好きなのは父からの譲り受けなので、スピルバーグ監督の父への思いに、少し胸が熱くなりました。


皆さんも素晴らしい映画体験を、ぜひ。