【映画】パターソン:普通の生活、だけどなんか心地いい

※ネタバレを含みます。

”なんてことない日常”
パターソンという男性が、毎日を淡々と過ごしていくだけなのだけど、その中で起こる些細な出来事がちょっと素敵だったりして、観終わったあとはなんだか穏やかな気持ちになります。
詩、書いてみようかな、なんて思っちゃったり。

ざっくり概要

アメリカのニュージャージー州パターソンに住む、街の名前と同じ”パターソン”という名の男性。バスの運転手を務めるパターソンは、毎日徒歩で職場へ向かい、バスを運転し、妻の手作りランチを食べ、時折ノートに詩を書き留める。夜は毎晩散歩へ出かけ、BARで1杯のビールを楽しむ。

彼の妻はちょっと風変わりで、飼い犬のマーヴィンはこっそり曲者。そんな彼の1週間の物語です。

パターソンという人は

パターソンは、朝は大体同じ時間に自然に目覚めます。寝てる妻にキスをして、朝食にシリアルを食ベて出勤。同じ毎日を繰り返すんだけど、毎日ちょっとずつ何かが起きる。
例えば、妻が双子の子供を持つ夢を見た、という話をなんとなく聞いてからというもの、毎日やたら双子に遭遇する。遭遇するたび、一瞬固まるパターソン。「わ。また双子だ」って心の中で思ってるんだろうな、って想像がつく表情をしててなんだかキュートです。

趣味は詩を書くこと。すきま時間や、昼休憩に秘密のノートへ詩を書き溜めています。妻は、パターソンの詩は才能があるから発表すべきだ、と言いますが、彼にはその気がなさそう。世間に公表するよりも、自分だけのノートに書き留めていく事こそが、彼の楽しみなのです。多分。

彼は人の話を聞くのが好きなようで、バスの点検をするおじさんの愚痴をただ聞いてあげたり、日々運転するバスの中で人々がする会話にこっそり耳を傾けたりします。

夜はマーヴィンの散歩がてらBarでビールを1杯飲むのが習慣。散歩がてらのBarなのか、Barがてらの散歩なのかはあやしいところ。マスターや常連客と軽い会話をして、そして1日が終わる。そんな淡々とした日常を何気なくこなす人物。それがパターソン。

妻に対して物言いたいシーンがあっても、言葉にせず受け流しているのに妻への愛を感じました。あきらかに美味しくなさそうな独自レシピの夜ご飯や、妻の謎のデザイン能力で派手になっていく家の中も、愛ゆえに受け止める懐大きな人でもあります。

マーヴィンの存在

マーヴィンはカナリ名演技を見せてくれます。それもそのはず、カンヌ国際映画祭でパルム・ドッグ賞を取ったそうです、表情も、歩き方も、なんだか世話の焼けるおじさんみたいな存在で、かと思えば、やんちゃ小僧みたいだったり。まぁ、なかなかのいたずらっ子です。

妻ローラの雰囲気

なんとも風変わりな奥さんで、基本的にはデザイナー?なのでしょうか。日々、カーテンや家具にペイントしたり、個性的なカップケーキを作ったり、急に高めのギターをせがんだり。どうやらゆくゆくはシンガーソングライターになる事も視野に入れているらしいです。

ローラの作るお弁当がユーモアのセンスが高くって、とりあえずお弁当の蓋の内側に注目して観ていただきたいです。最初はパターソンが自分でやっているのだと思ってたんですが、映画の最後の方でこれはローラが仕込んでるのか!と気付き、クスっとしちゃいました。

この映画の魅力について

私が思うに、この映画は、パターソンから自然に発せられる言葉に魅力があるように思います。

例えば、パターソンが帰宅して妻に一言「Thank you for the dinner.」と言うシーンがあるのだけど、こんなにも自然に、毎日の事に対しての感謝を言葉にできるのって本当に素敵。

ローラがディナーと映画を奢ってくれた時も、玄関の前でキチンとお礼を言ってました。彼にとって、"言葉"はとても重要な"表現"なのでしょう。

暴力的なシーンや、セクシーなシーン、サスペンスなシーンもありません。パターソンの日常が淡々と過ぎていくお話。でも何故か、これがとてもいい。ホッと一息つきたいときに観るべき映画かもしれません。

唯一、気になった点

ひとつだけ、気になってしまった点があります。
それは、永瀬正敏が喋りすぎなとこ。「アーハー」のくだりは確かに面白いんだけど、英語の使い方がちょっと変と感じさせておきながら、しゃべる量が多くて。。。きっと、彼は詩が好きで、好きな地に来て見知らぬ人と詩についてお喋りしたかったんでしょうね。

繰り返しますが、「アーハー」のところは面白かったです。パターソンの反応が。

この映画を観て、アダム・ドライバーがもっと好きになりました。
彼の他の作品も観ていきたいと思います。